大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)1318号 判決

被告人 長谷川留治

〔抄 録〕

原判決の挙示する証拠によると、被告人は、昭和三十一年六月二十二日午前八時過頃燕市大字杣木字廿六木二千四十番地駒沢明美方居宅前庭等でいわゆる藪倒しをしたが、その際右駒沢明美が観賞用等として植栽中の杉ノ木四本、キキヨウ一本、小竹数本および菊一株等を同人の承諾を得ず無断で切り取りまたは抜き取つた事実を認定することができる。

ところで弁護人は、前記草木は所論のように被告人の所有物であり、またかりに被告人の所有に属せず右駒沢明美の所有物であるとしても、被告人は、所論のような事情により、駒沢明美はその居住家屋の不法占拠者であつてその敷地である本件土地を利用し得る正当な権原がないのであるから、その植栽中の前記草木はすべて土地の所有者である被告人の所有に帰属するものとかたく信じていたのであつて、他人の物を損壊する意思は毛頭なかつたのであるから、本件被告人の所為は罪とならないと主張するにつき按ずるに、前記草木の所有権がかりに右駒沢明美にあつたとしても、原審記録および当審における事実取調の結果によれば、被告人は、前記草木が右駒沢明美の所有に属することを知りながら、他人の物を損壊する犯意をもつて、これを切り取りまたは抜き取つたものではなく却つて、被告人においては、本件地上に存するすべての草木は被告人の所有であり、かりに右駒沢明美方において植栽したものがあるとしても、同人はその居住家屋の不法占拠者であつてその敷地の正当な利用権原を有しないものであるから、その植栽した草木は土地の所有者である被告人の所有に帰属するものとかたく思い込んでいた事実が認められる。従つて右駒沢明美がその居住する本件地上の家屋に賃借権を有し、従つてその敷地たる本件土地を利用する正当な権原を有するか否かを判断するまでもなく被告人には前記藪倒しの当時においても他人の物を損壊する意思はなかつたものと認めるのが相当である。

してみれば本件においては、被告人には他人の器物を損壊する犯意がなかつたのであるに拘わらず原判決が被告人にその犯意があつたと認定したのは事実の誤認であり、その誤認は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。

(岩田 八田 司波)

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